さよならビスケット | ハナシカミョウリ

さよならビスケット

もう魔法が 切れてしまった

うんとも すんとも いわなくなった

あの匂いも 忘れはじめてる

「さよならなんだね」


指切りしながら歩いた 階段

白いお皿 叩いた テーブルの下

うせもの みつからない

「あんなに 近くにあった のにね」


ふりそそぐ雨のような

「しかたないさ」に

また 大人にされてくよ

「すべてが いつか あとかたもない」と

それはとても かなしいね


いつか

くちびるの先からこぼれおちた

食べかけのビスケット ポケットに

大事にしまっておいたんだ

金色のジャム 染み出した

同じ色した夕暮れの中

きみには何も隠せなかった

伸ばした指先に乗せて渡してしまった

うれしそうにきみは食べてしまった


もう魔法は おわってしまった

ないても 怒っても しかたなくなった

あの声も 忘れはじめてる

「おわかれだね」


振り切りながら駆け下りた階段

その手を はじいた テーブルの上

もう二度と みつからない

「こんなに 近くに いたのにね」


ふりそそぐ雨のような

「さようなら」で

また 大人にされてくよ

「すべてが いつか わらいばなし」と

でもまだとても かなしいこと だね



いつか

指先からこぼれおちた

願かけのビスケット きみに

食べさせちゃいけなかったんだ

魔法のジャム 染み出した

同じ色した夕暮れの中

きみには何も話せなかった

伸ばした指先に乗せて渡してしまった

うたがいもなくきみは食べてしまった


その瞬間 なにもかも 解ってしまった


ふりそそぐ光のような

「いえない言葉」に

一人 子供にもどされてく

「すべてをわすれて」と

逆さまのへらず 口  かなしいね



いつか

くちびるの先からこぼれおちた

魔法のビスケット ポケットに

隠してしまっておいたんだ

金色の声 響いた

同じ色した夕暮れの中

きみには何も隠せなかった